柴田礼子のオルフ留学日記

       あなたはどう思う?


オルフ研究所での生活の中で、私はびっくりするような様々な出来事に出会った。オルフ研究所の中では、専門分野は「音楽と動きの教育」となる。従って、かなり様々な授業を必修で受けなくてはならない。

私が最初に入った当時の2年コースは、リコーダーも必修で、個人レッスンも受けるようになっていた。ちなみに、ヨーロッパで最初に子供達が習う楽器はリコーダーで、子供用に穴が押さえやすくなっている形式の物である。

リコーダーは簡単で、楽器自体が安いし、持ち運べて、ソロもアンサンブルもできるというすぐれ物なのである。私もリコーダーとはいい出会いをしたので、シュピールハウスでもレッスン科目に入れたのだが、通常の認識では、リコーダーは学校で学ぶ楽器らしく、わざわざレッスンとしてやるという感覚がないらしく、科目としては成立しなかったのである。

リコーダーの曲はバロックのいい曲がいっぱいあって、大人でも大いに楽しめる楽器で、いつか機会があったら、シュピールハウスでも、リコーダーのアンサンブルをやりたいと考えている。そういえば、教育テレビで前にやっていた「ふえはうたう」の吉沢実さんは、オルフの先輩でもある。彼はオルフの後、リコーダー科で活躍した方である。

さて、今はそんな余裕がある発言をしているが、私が最初に出会ったリコーダーの先生とのレッスンでは、やはり「えっー、そんな・・・」という事が待ちかまえていたのである。

ある時、レッスンの中で先生は、やさしくこう言いだした・・・「礼子はどう思う?どういう風に吹きたい?」と・・・。この言葉に私はまた、カルチャーショックを受けてしまった。それまで、そんな事を言われた事はなかったもの・・・。

普通、日本の音大では、教授の言う事は絶対的で、生徒は言われた通りに弾くというのが当たり前なのである。だから、こちらも、それに慣れてしまって、慣れるとその方が楽な場合もあったりして、自分で考えるとか、自分らしく解釈するなんていう事は殆どなくなっていってしまう。 だから、先生に急にそう振られた時は、どうしようとカッーとしてしまって、何をどう言ったか覚えていない位、うろたえてしまったのである。

先生のコピーを作る為に演奏する訳ではないのに、言われた通りに弾く事とか、譜面に忠実に弾く事が第一義になってしまうという、本来の音楽からは程遠い教育を受ける事が多いという事実は、あれから何十年経った今でも、そう変わっていない・・・。

こういう音楽との向かい合い方はオルフでだけ通用することなのではなく、どこでも殆どヨーロッパでは同じである。そういう事があってから、私はやっと音楽をする意味みたいな物を考えるようになったのである。私がうろたえ困った後に、何を考え、どう行動したかはこの次に・・・。

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